利益の確保

利益の確保/儲かる商売ですか

「会社の目的は何ですか?」と質問されたら社長のあなたは何と答えるでしょうか?
会社の本来の目的は2つあります。ひとつは利益の確保、そしてもうひとつは利益の再投資です。後者は「利益の分配」のページで検証するとして、ここでは前者の利益の確保について考えてみましょう。まず会社の儲け(利益)の計算式はとてもシンプルで、

利益(儲け)= 収入−支出

となります。「事業は儲けるためにしているのだから利益が出て当然だ!」と思われるかもしれませんが、いまある中小企業の約7割が赤字会社であるという現実を考えると、いまの社会情勢下で利益を出すということは決して簡単ではありません。上記の計算式を決算書科目に当てはめてみると次のようになります

売上高=売上原価+販売管理費+利益

売上・売上原価(変動経費)・販売管理費(固定経費)の関係

いま利益がゼロと仮定すると、(売上−変動費)=固定経費 の関係が成り立ちます。変動経費とは売上の増減によって変わる費用、固定経費とは売上の増減に関係なくかかる費用のことで、売上−変動経費=粗利益(粗利)により固定費を補っているという関係になります。業種によって変動経費の売上高に占める割合(原価比率=[1−粗利率])は変わりますが、たとえば原価割合を次のように仮定してみたとしましょう。(消費税の簡易課税の仕入控除割合を参考に数値化)

卸売業(90%)・小売業(80%)・製造業(70%)・その他事業(60%)・サービス業(50%)

上記の各事業において月に200万円の固定経費がかかるものとして会社の利益がゼロになると仮定したときの会社に必要な売上高を計算してみると、

比較@
原価率 必要売上高
卸売業(90%) 2,000万円
小売業(80%) 1,000万円
製造業(70%) 667万円
その他事業(60%) 500万円
サービス業(50%) 400万円

比較@のようになります。つまり業種によって変動経費の割合が大きく異なるので、同じ利益金額を得る場合でも取り扱う業種によって必要とする売上高は違ってくるという事実です。逆にいうと売上原価(変動経費)の削減により粗利益(売上−原価)の割合が大きく改善されることを意味しています。また各業種の売上高が2,000万円とした場合の粗利益の金額は比較Aのようになります。同じ売上でもその売上を得るための原価率が異なるため粗利益の金額も原価率が低いほど増加していきます。つまり業種が違えば売上の金額で会社の規模の比較をするということは無意味だとわかります。

比較A
売上高 原価 粗利益金額
2,000万 1,800万 200万
2,000万 1,600万 400万
2,000万 1,400万 600万
2,000万 1,200万 800万
2,000万 1.000万 1,000万

売上の増加

売上を増加させるには「単価を上げる」「数量を増やす」という2つの要素があります。単価の設定はひと昔前は商品を作るのにかかった費用と固定経費に利益を上乗せする形で設定されていましたが、価格競争が激しくなった最近はこの式で設定した単価(売上)ではお客さんは反応してくれません。単価を上げるためには他の商品より優れている商品を作りそのことをアピールできなければなりません。具体的には付加価値(※)をつけて購買の動機をお客さんに持ってもらうということです。また数量を増やすにはその商品に興味があるお客さんに商品のことをよく理解してもらい、数多く何度も購入していただくリピーターになってもらう必要があります。既存の売上を1.5倍にすることはとても大変ですが、単価と数量それぞれの要素を1.2倍ずつ増やすだけで約1.5倍の売上が増加する事になります
※付加価値:他の商品と比べて機能性・使用感が優れているだけでなく、その商品の使い方やどうしてその商品が生まれたか、商品完成までのプロセスにまで意味を持たせ、所有することによっても意義があると感じさせること

売上原価(変動経費)の削減と適正化

売上原価は主に材料費と人件費(賃金)に分けられます。材料費については仕入れ単価を安くすることが必要であり、一括購入による値引きや直接買いによるマージン削減などが考えられますが、最近では産地偽装や粗悪品などの販売なども横行していますので慎重に商品や材料を見極める目が必要になります。品質を落とさずに良いものを仕入れられるように常に心がけることが大切です。
人件費については現場での作業効率を考えその都度評価と決定を行います。つまりどの程度の仕事をどれだけの時間内に行ったかということを評価の対象として数字に反映させるということです。毎月売上が変動しているのに固定給という形で毎月一定の給料を支払うことがそもそもおかしいのではないでしょうか。そして必要なときに必要な人材を必要な量だけ確保・投入をしていかなければなりません。能力のある人に能力にあった仕事をきちんと与えること、そしてその評価を給料に反映させることは良い人材を確保していく上でとても大切なことです。

固定費(固定経費)の削減

売上原価の削減ができたら次はいよいよ固定費の削減に取りかかります。固定費とは売上に関係なく発生する経費のことですが節約や節電によりやみくもに削減すればいいというものではありません。固定費の削減の基準も「金額」ではなく「効率」で考えていくべきです。こまめに節電をして光熱費の金額が下がっても暗くなったために従業員が働きにくくなったり、またその管理のために従業員の仕事が増えてしまっては逆効果です。また家賃削減のために不便な場所に移転しても従業員の士気や作業効率が低下したのでは意味がありません。政府の行なっている『事業仕分け』と同じく節約した場合の「負」の部分を検証しつつ、ほんとうに無駄で必要のない経費を削減していくことが大切です。