現金の確保

現金の確保(きちんと回りますか)

「利益の確保」のページでは儲けの重要性について書きましたが、事業を運営・継続していく上でもうひとつ大切なのがお金の流れを考えることです。事業を始めるとそのお金の動きは止めることはできませんので、つねに現金の管理(入出金)を頭において事業を進めていかなくてはなりません。
次の3つの例をみてください。

1.毎月の売り上げが300万円でその売上代金は手形回収で決済は3ヶ月(90日)後である
2.耐用年数が5年の設備機械を500万円で現金で購入した
3.借入金の返済が毎月15万円ある

「1」の毎月の売上にかかる原価が150万円でその支払いの決済が1ヶ月後とすると、下図1月の2ヶ月後の3月末時点では1月の売上代金に対する入金はありません。しかし1月と2月の売上に対する原価の支払いは2月と3月に発生しますので、1月以降の現金の流れだけを考えると仕入原価の2ヶ月分150+150=300万円の支払いのみが発生します。また損益面では3月が決算月の会社の場合損益は発生主義によって計上されますので、1月から3月までの損益を単純に考えると売上が300×3=900万円、仕入原価が150×3=450万円となり損益は900−450=450万円、税率を約40%と仮定すると税額は450×40%=180万円となります。決算の2ヶ月後の現金は、売上入金(600=300*2)−仕入支払(600=150*4)−税金(180)=△180万円となり、一時的に資金がショートしてしまうことがわかります。

  1月 2月 3月 決算時 4月 5月
売上高 300 300 300 900 300 300
現金入金 ( 0) ( 0) (0) ( 0) (300) (300)
仕入高 150 150 150 450 150 150
現金支払 (0) (△150) (△150) (△300) (△150) (△150)

「2」は事業用資産の購入ですが、設備導入のため500万円の機械を購入してもその期に認められる減価償却費は100万円程度です。(期首に資産を購入し定額法で償却を行った場合)資産の購入による節税効果は40万円=100×40%と算出され、現金の実際の流出は460万円=500−40となります。この流出金額分をなんらかの形で補てんしていかないと、事業経営が圧迫されることになります。また購入の代わりにリースを選択すると、購入資産の支払分が一時期に集中せず各期の経費として計上されるので、資金繰りの予定もたてやすくなりますが、一般的にリースを利用した場合のほうが購入した場合よりも支払う総費用が大きくなりますので、長期的な視点により選択をしなければなりません。

「3」の借入金の返済金額は税金を計算する上での経費にはなりません。つまり1年間の借入金の返済のためには180万円=15万×12ヶ月の資金を事業により捻出しなければなりません。たとえば当期利益が300万円(手許にも300万円あると仮定する)の場合、それに対する税金は120万円=300×40%となり差し引いた180万円が手許に残るはずですが、借入金の返済が月に15万円あると手許にはまったく現金が残らない計算になります。加えて借入金には金利負担も生じてきます。

「黒字倒産」という言葉を聞いたことがありますか?売上も利益も順調に増加しているはずなのに倒産してしまう会社のことをいいます。黒字倒産の原因の多くは「1」によるものですが、売上先の経営不振により売掛債権が回収できなくなり自分の会社も資金繰りに行き詰ってしまう連鎖倒産も、体力のない中小企業には多くなってきています。逆にお金があれば経営不振だろうが売掛金が未回収になろうが倒産することはありません。つまり経営者には利益を獲得するノウハウとお金を調達するノウハウの両方が必要になるということです。